民泊と農業と、会社員も経た任期後とこれから

東温市 元地域おこし協力隊 岩橋洸平さん

愛媛県の中央に位置する東温市は、その土地の7割以上が山間部であり、石鎚山系の清らかな水と肥沃な土壌を活かしたおいしい米や麦などの農作物や地酒などの発酵食品の産地として活気づいています。また、県都松山市に隣接し、街中の便利さと田舎の自然の豊かさが混在している都市近郊田園都市です。

岩橋洸平さんは2020年9月に大阪から東温市に移住し、地域おこし協力隊として中山間地域の活性化に取り組みました。任期後は、東温市則之内地区で民泊「miuchi house」を開業。民泊経営をしながら、地域の特産品であるシキミの栽培などの季節労働、会社員、派遣社員などさまざまなスタイルで働きながら定住しています。

以前、協力隊任期中の活動もご紹介いただいた岩橋さん。任期終了後2年が経とうとしている現在、どのような暮らしをされているのか伺いました。

ライフスタイルの選択肢を選べる場所に | えひめ暮らしネットワーク

宿泊関係の仕事をしたくて東温市に移住

Q.東温市を選んだ理由を教えてください。

もともと宿泊関係の地域おこし協力隊募集を探していました。地元の大阪からそこまで遠くないところに絞ってみて、東温市が候補に挙がりました。あまりに何もない田舎過ぎる場所は不安だと思っていたので、そこまで田舎過ぎず、ちょうどいい場所だったというのが最初の印象であり、東温市を選んだ理由です。

Q.現在の暮らしはどうですか?

任期3年目の12月頃に現在民泊をしている場所に引っ越しました。民泊としてちゃんと稼働しはじめたのは、任期終了の1カ月前くらいからです。正直、任期中のほうが将来に不安はあって、しんどい時期が多かったですね。今も民泊をはじめてまだ2年目で、複数の仕事をしながら不安定ではありますが、想像していたよりは自由な時間も作れています。協力隊のときよりプライベートの時間は取れている感じがありますね。自分のペースで休みも取りやすいです。

一棟貸しの民泊「miuchi house」

就職も経て、複数の仕事でバランスを

Q.現在の仕事スタイルについて教えてください。

今は、週5日の平日は派遣社員として働いています。残りの2日は、宿の準備をするか、農業するか、休んでいるか、といった感じです。基本は土日が休みなので、民泊の予約が入っているときは、平日の仕事終わりにも少しずつ準備をしています。任期後、8月からは就職して1年ほどは会社員をしていたんですけど、さすがに会社員をしながら宿のことをやるのはしんどいなと感じていたので、派遣社員という今の形にして、だいぶバランスは取りやすくなりました。

あとは、シキミの仕事も任期中から現在まで継続してやっています。地域の方が管理するのが難しくなった急斜面の場所の管理を引き継ぎました。今年も8月は宿の準備とシキミの出荷準備をひたすらやっていました。お盆がある8~9月や年末、お彼岸の3月が出荷シーズンなので、お手伝いを募集して作業することもあります。

Q.1日のスケジュールを教えてください。

仕事がある日は、8時~17時まで働いています。帰ってきて夜の時間はフリーですが、宿の予約があるときは、掃除や洗濯など少しずつ準備をしていますね。シキミの季節には、家に持ち帰って出荷準備していることもあります。

Q.協力隊のときと今とで変わったことはありますか?

根本的にはあまり変わってない気がしますね。協力隊のときも農業はしていましたし、宿泊のことは任期中も手伝っていました。逆に、今のほうが地域行事などには出るようになったかもしれないですね。任期中がコロナ禍だったというのもありますけど・・・。当時はそもそもお祭りごとが中止されていたので。地域の方も任期後に会う機会が減った方はいますけど、忘れられない程度の関係は築けていると思います(笑)
市役所の方からときどき民泊のお客さんを紹介していただくこともあり、協力隊だったからこその繋がりも続いています。

東温市の特産「シキミ」

民泊と農業、多様な働き方に挑戦

Q.民泊をやりたいと思っている協力隊にメッセージをお願いします。

準備するなら任期中に稼働できるくらいのペースで計画したほうがいいですね。早めに動かして、生活基盤を整えることを考えたほうがいいと思います。じゃないとぼくみたいにぎりぎりになってしまうので(笑)協力隊ではゲストハウスを考える方が多いイメージですが、民泊は基本的に1棟貸しなので、稼働率や初期投資も違います。ぼくの場合は、偶然今の物件が見つかり、大きな工事もしていないのであまり初期費用はかかっていません。


民泊に限らず、何を始めるにも物件を見つけることがいちばん難しい点だと思うので、その情報が入ってくるようにいろんな人に物件を探していることをアピールしておくことは大事だと思います。協力隊のうちに、やりたいことをいろんなところで言っていれば、どこかから物件など紹介してもらえることがあるかもしれません。

Q.今後の展望を教えてください。

任期が終わってからもずっとバタバタしていたので、まずは現在の民泊と農業で安定させたいですね。できれば今の状況で目指せる売り上げのてっぺんを叩いてから、次のことも考えたいです。できれば、宿をもう一軒持つことも考えています。

あと、農作物は作ってみたいと思っています。売り上げを考えるというよりは、自分も食べられる作物がいいですね。文章を書くことも任期後あまりできていないので、web関係の仕事は興味があります。民泊でサービス業、シキミなど農作物で第一次産業、会社での仕事もしながら、それらでバランスを取ったライフスタイルを目指せたらと思っています。

Miuchi house(@miuch.house) • Instagram