改めて島民1年生スタート。

本と自家焙煎珈琲の店
こりおり舎4月OPEN

 みなさま、はじめまして。

 えひめ暮らしネットワークの事務局長、千々木 涼子(ちぢき りょうこ)です。 2017年4月~2020年3月、今治市の地域おこし協力隊として、大島の吉海町で活動 していました。

 大島に移住してのくらしも4年目になるわけですが、協力隊としてあてがっていただいていた住宅を出て民家を借り、ようやく正式に島民になった感じで、お客さん状態ではない暮らしという意味では、1年目のような気分です。

 最近取材で「なぜ大島を選んだのか」と聞かれ、即答できずに考え込んでしまいました。どうしても大島がよかった、というわけではないのも事実です。いろいろ理由はあるけれど、ぞんざいな言い方をしてしまえばたまたま、いいように言えばタイミングと縁だった、というところでしょうか。

 もともと、親が転勤族で自分も根無し草であちこち暮らしたせいか、地元愛、みたいなものがとても希薄です。地元の方でも協力隊や移住者の友人でも、「ここ最高!」「ここに惚れこんで」という話を聞くと、眩しく見えてしまうほど。その分、どこでも暮らしていける、という自信もありました。私にとっての大島は(愛媛、今治と言い換えても)、自治体規模や協力隊のミッションといった「条件」で選んだ移住先でした。

海沿いの道に家々が並ぶ、島ならではの光景。

 そんな私が地域に家を買い、店を開くまでになったのには、ここで暮らしていける、暮らしていきたい、という実感が、じわじわ、じわじわと3年間積もり積もってきたいろいろが影響しています。

 最初は、移住前、面接で初めて今治を訪れ、島まで足をのばした時。すれ違うおばさん、畑仕事をしているおじいさん、会う人会う人が、挨拶をしてくれたり、声をかけてくれたりしたのです。不信感や自衛の意味合いとは違う、単なる声掛けに、なんだかここいいなぁと思ったのを覚えています。

 先に出会った方がほかの方に私を自分の子のように紹介してくださったり、小さな活動を応援してくださったり。小さなうれしいこと、しあわせなこと、たいせつなものが積もり積もって、いつしか、来島海峡大橋を渡れば、帰ってきたなぁと思うようになりました。

いいところでしょう、と地域の人が胸を張れるように。

 協力隊として活動しているときから、地域の人にシビックプライドを取り戻してもらう、ということを意識しています。移住してきました、北海道から来ました、自己紹介のたびに、何度「なんでこんな何もないところに」と言われたことか。ここ最高!と移住したわけではないけれど、毎日見ても見飽きない海の色、日々変わる山の色、そこで採れる季節の食材、昔から続く伝統、そのすべてに惹かれているというのに。すてきなもので溢れているというのに。

『里山資本主義』の著者、藻谷浩介さんは、「なにもない」という言葉が地域を疲弊させる、と言っていました。そこに、謙遜と自負も見え隠れしてはいるのだけれど、それでも美徳というにはあまりにもったいない。地域の人が移住者に対して、「よくきたね、いいところでしょう」と言えたなら、地域にとっても移住者にとってもどんなにいいか。

 その橋渡しをするのは、協力隊をはじめとする移住者の役目なのではないかと思ってます。外から来た人が、外の目線で、「ここいいですね!」と言い続けること。それが、地域の人の、「そうじゃろ~」を引き出すのではないか。そう考えて、今日も私は言い続けます。ぜひ、みなさまの地域でも!

初めて自転車(ママチャリ)で来島海峡を渡ってもう帰れないかと思った帰り道の絶景。