人とつながり、まちを元気にする「コミュニティナース」

久万高原町地域おこし協力隊 酒井 春菜さん

 愛媛県内で活動する地域おこし協力隊を紹介する連載、協力隊ご本人の記事シリーズです。

 今回は、久万高原町にUターンし、コミュニティナースとして活動する酒井春菜さんです。

 こんにちは!愛媛県久万高原町で令和2年10月にUターンし、地域おこし協力隊をしている酒井春菜です。

 いきなりですが、「コミュニティナース」をご存知ですか?コミュニティナースは、職業や資格ではなく実践のあり方で、コミュニティナーシング=地域看護からヒントを得たコンセプトです。私は看護師資格を活かしコミュニティナースとして、住民さんの生きがい・健康づくりを暮らしの身近なところで行っています。

久万高原町美川地区。このような山間部で一人暮らしをしている高齢者も多い。

きっかけは、ある患者さんとの出会い

 以前は、急性期病院の外科病棟で看護師として勤務していました。その中で、がんの発見が遅れ、手術ができないほど進行しており看取りの方針になる患者さんの多くは、「おかしいと思ったが、相談できる人がいなかった」と話していました。そこで、「地域の身近なところで看護師が住民さんに寄り添うことはできないのか?」と調べた時にコミュニティナースの存在を知り、まさにこれだ!と感じました。当時看護師3年目で、まだ臨床を離れるには早いかなと迷いもありましたが、若い今だからこそ自分にできることがあると思い、意を決してUターンしました。

 元々幼い頃から、町内のお祭りやイベントで人が少ないからこそ地域の方々が力を合わせて頑張る姿を見て、「このまま人口減少が進むだけなんて嫌!この久万高原町を少しでも守り続けるためにいつか自分も帰ってきて地域貢献したい。」と夢を抱いていました。その夢への第一歩、自身の看護師という資格を活かして踏み出せたので、毎日楽しいです。

 久万高原町での田舎暮らしも最高です。田んぼ・山・川などの四季折々の景色に癒され、野菜をいただいたり色々助けていただいたりと人々のあたたかさに触れ、帰ってきてよかったと心から思える日々を過ごしています。

ナスくる中の写真。「孫みたいなもんよ!」と、元気を与える側のはずが住民さんから元気を頂いてます。

町おこしは、住民さんが元気じゃなきゃ始まらない!

 久万高原町は、県内で最も面積が広いのに人口密度は県下最下位。ようするに、集落が分散しているため公共交通機関が行き届いておらず、病院に行きたくても行けない方がいます。高齢化率も県下1位で一人暮らしの高齢者も多く、コロナ禍で外出する機会も減り、孤独を感じながら不便な生活を余儀なくされる人がこんなにもいるんだと、Uターンし現実を目の当たりにしました。

 そのような方々に、少しでも楽しいと思いながら心身ともに健康で生きてもらいたいと思い、まずは住民さんに身近な存在として関われるよう山間部を巡回する「移動販売車」に同行し始めました。健康相談に乗ったり、その場でカフェを開き血圧測定などしています。また、町内の施設をお借りし「コミナス保健室」も始めました。

 また、高齢者だけでなく子供や子育て世代にも関われるよう「くまっこ食堂」という食育・多世代交流を目的としたイベントも定期開催しています。先日のくまっこ食堂では、コミナス保健室の常連さんで「いらない畑があるから使う?」と教えてもらい耕作放棄地を整備し直し、サツマイモを育てて芋掘り体験を子供たちにしてもらいました。

 ほかにも、「ナスくる」という個別訪問サービス、包括ケアグループや自殺対策の会など組織への参加、他機関と協働し体操やサロンへの参画、コミュニティナース育成講座の運営、イベントのボランティア、広報活動など行っています。

地域へ医療人が飛び出すことが当たり前の世界になるように

 地域おこし協力隊になって約1年経ちますが、様々な事業を通して、住民さんの笑顔をたくさん作れていると実感しています。最初は悩みや不安を抱かれていた方も、「あなたと出会えてよかった!毎日が楽しい!」と言ってくださることもあり、私もとても嬉しいしやりがいがあります。  

 しかし、この広い久万高原町にはまだ介入できていない地区もたくさんあり、もっと多くの地区で同じような活動をする仲間がいてくれたらなぁと思う時があります。そのために、コミュニティナースを知ってもらい、仲間が増えるように努めていきたいです。

 任期後は、訪問看護ステーションで訪問看護師として働きながら、夢を叶えたり喜びを作ったりするような実費サービスも作っていけたらいいなと考えています。疾患を抱えながら在宅で治療を行う患者さんにも、普段のケアの中では感じてもらえない楽しさや嬉しさを提供したいです。それを叶えるために、勉強会への参加等はもちろん、まずは多職種の方々と日頃から連携を図り、関係性を築いていきたいです。

 久万高原町が元気で溢れるまちになるよう、これからも全力で頑張ります!

くまっこ食堂で芋掘り体験。耕作放棄地の有効活用。

久万高原町HP https://www.kumakogen.jp/

Instagram https://www.instagram.com/kumakogen_haru/

久万高原まちづくりプラットフォーム ゆりラボ https://www.yuri-labo.com/