内子町地域おこし協力隊 大川 民恵さん
こんにちは!
愛媛県内子町で地域おこし協力隊として活動している大川民恵です。サイクリングが内子町の新しい風景のひとつになることを夢見て、内子町ビジターセンターを拠点に自転車観光振興に取り組んでいます。
パンデミックの中での決断
出身は愛媛県松山市ですが、自転車好きの夫とともに日本からニュージーランドまで自転車世界旅行に挑戦したことをきっかけに、アウトドア先進国でもあるニュージーランドで8年間暮らしました。ニュージーランドでの暮らしは心地よく、永住権も取得し充実した日々を送っていましたが、人生の次のチャプターを考えたときに、自分たちの情熱や経験を活かし日本でサイクリングやアウトドアアクティビティの発展に携わりたいという思いが膨らみ、夫と夜な夜なそんな話をする機会が増えました。それから日本国内の移住先を調べるうちに、自然や食・文化が豊富な四国、できれば出身地の愛媛県で活動したいと思うように。海外からの移住なので選択肢は山ほどあったのに、結局出身地に戻りたいと思うようになるのですから不思議です。
それからは気になる地域のオンラインセミナーや個別相談会に参加したり、前職の出張で帰国するたびに休暇をとって実際に現地を訪問したりして情報収集に奔走しました。たくさんの素敵な出会いにも恵まれ内子町への移住がイメージとして湧き始めた頃、当時の役場担当者さんから、地域に根差しながら将来の起業を目指す「地域おこし協力隊」制度について教えてもらいました。当初は協力隊のことは何も知らず、まず起業するにはどうするかばかり考えていたので、目から鱗で、しかも、ちょうど内子町では観光振興枠の隊員を募集していると知りがぜん興味がわきました。しかし、応募するには国内に住んでいることを証明できる住民票の提出が不可欠と知り、総務省にも何度か問合せしたものの例外が無いとのことで、応募 = 帰国という覚悟を迫られます。
ところが、2020年春の帰国に向けて具体的な話を進めた矢先、新型コロナウイルスのパンデミックがはじまってしまいます。先が見えない状況の中、何の不満もないニュージーランドでの暮らしを終える必要があるのか、不採用だったらどうするのか、悶々と考える日々が続きましたが、人生一度きり!いずれ挑戦するなら早い方が良い!!とコロナ禍の帰国を決断しました。
帰国後は慌ただしく応募書類の提出を終え、面接では「観光振興とひとまとめにしても幅広い。私だったら自転車で観光振興に取り組みたい、サイクリングを観光の新しい切り口にしたい」と自分なりのミッションへの解釈を説明しました。
当時内子町ではレンタサイクルと言ってもママチャリがある程度で、自転車観光振興に対する計画も特にありませんでした。いま思えばよく私にチャンスを与えてくださったなあと、本当に感謝しています。
小さなことから出会いが広がって
2021年4月から任期が始まり、はじめはとにかく手探りで、ビジターセンターでの業務をお手伝いする傍ら、やってみたいことに片っ端から取り組む日々が続きました。まず始めたのは月1回のコミュニティライドです。最初は役場の方にもお願いして5名からのスタートでしたが、今では毎回20-30名が町内外から参加する交流の場に成長しつつあります。その他にも、町有林の利活用を目的としたマウンテンバイクトレイル造成、点在する地域の魅力をつなぐサイクリングツアーの実施、サイクリングコースの開拓、町内サイクリングイベントのコース監修などなど、すべて現在も続いている活動ですが、続けるうちに関わってくれる人や内子町を繰り返し訪れるリピーター、いわゆる関係人口の創出にも繋がってきています。私の活動のほとんどにおいて、時間の許す限り手伝ってくれる夫にも心から感謝しています。
そんな私の活動を見守ってくれていた当時の所属課長が、国の補助制度を利用して、町内に多数のEバイク導入を実現してくださいました。また、勤務先のビジターセンターでは、自転車が大好きな観光協会事務局長との出会いにも恵まれ、町とは別にさらにEバイク導入を決定。事務局長との出会いは、私の活動の幅を広げる意味でも本当に幸運でした。
任期2年目になる今年度は、内子町の看板商品造成事業や、えひめ南予きずな博の広域連携事業に夫婦で携わり、有識者を招致したモニターツアーの実施や、サイクリングコース監修、レンタサイクルスタッフやサポートライダーといった人材育成など新しい挑戦の機会に恵まれた1年でした。また、これらの事業を通して、自転車振興のために各市町が直面している課題を学ぶことができたのも、思いがけず大きな収穫となりました。
サポートライダー育成講座 きずな博Eバイクツアー
地域の垣根を越えて
任期最終年度となる来年度は、現在の直接雇用型から業務委託型に切り替え、内子町はもちろん、南予地方⇒愛媛県⇒四国へと活動の幅が広がるように取り組みつつ、来るべきインバウンド回復に備え、本州・四国・九州をまたいだモニターツアーの実施も計画中です。
お店を開いたり、商品をつくることと比べると、目に見えてわかりにくい活動なため不安になることが少なくありませんが(もちろん苦労の形はそれぞれなのですが)、今後の手応えと可能性を実感しているのも事実です。サイクリングイベントやツアーの参加者、個人的な関わりがある家族や友人に自転車で近隣を案内し喜んでもらうたびに、素晴らしい移住先に巡り合うことができたことに感謝しています。