瀬戸内の離島で気づいた新しい生き方のカタチ――釣りをしながらのんびり暮らしたい

合同会社みちしおプロジェクト 平田浩司さん(元上島町島おこし協力隊)

愛媛県北東部の上島町は、25の島で構成される珍しい離島町です。温暖な気候で青レモンや柑橘などの第一次産業や製造業が盛んであり、瀬戸内海国立公園に囲まれた美しい地域です。平田さんは2020年4月に移住し、協力隊活動後はゲストハウス運営を起点に台湾をはじめとするアジア諸国からの観光客誘客や「ポタリングの聖地」化、高井神島との連携などさまざまな活動に取り組んでいます。

取材者から当事者へ――任期後を見据えて

Q 上島町を選んだ理由を教えてください。

30歳まで社会科学領域を学び、「社会」の輪郭が明確な離島に興味を持ちました。その後、新聞記者やマーケットリサーチャーとして取材をする中で、自分も当事者になりたいと思うようになり、上島町が移住定住促進・空き家バンク担当の地域おこし協力隊を募集していたことを知り、自分にぴったりだと思い応募しました。

Q 協力隊時の活動について教えてください。

最初に空き家調査を行い、地域との関係構築に時間をかけました。任期後にも活動していくために仲間が欲しかったからです。その後、移住促進HPの立ち上げや空き家の利活用を活動目的とするNPO法人「かみじま町空き家をよくし隊」設立、他自治体視察、高井神島との連携などに取り組み、任期後にも地域と関わることのできる体制づくりをしました。
今治市の協力隊との交流連携が目的で立ち上げた「せとうちライン」では創業を目指す同期に、愚痴などを聞いてもらうこともあり本当に助けられました。
協力隊活動の後半は創業の準備を行いました。ビジコンや補助金申請を行うことでたくさんの人とつながり、そのおかげで3年目には「合同会社みちしおプロジェクト」を設立し、「ゲストハウスみちしお」を開業することができました。

NPO法人かみじま町空き家よくし隊の役員たちと
協力隊時の東京での移住セミナー

ポタリング、アジア諸国からの誘客、そしてマンガ島構想――多彩な挑戦で島の未来を創る

Q 現在の生業や活動について教えてください。

現在、上島町を「ポタリングの目的地」にするため、愛媛大学社会共創学部環境デザイン学科の渡邉敬逸先生のプロジェクトと連携し、ポタリング・マップを制作中です。移住者や新店舗を中心に飲食店の取材を行い、今後は歴史文化や自然景観を楽しめるコースも提案する予定です。
また、オフシーズン対策として台湾からの旅行客誘致を進め、台北の旅行フェア参加やガイドブック掲載、HPに台湾華語表記を追加しました。台湾からだけでなく他のアジア諸国からの誘客も計画しています。
NPO法人では、空き家再生や移住体験ツアーを実施。高井神島では「マンガ島構想」を進めたことにより、一家族の移住が実現しました。現在、まんが学校も準備中です。
昨年からヤギを飼い、耕作放棄地の探索やトロピカルフルーツ栽培にも取り組んでいます。

出稿したガイドブックの出版時の台湾の出版社で担当者と
中島からやってきたヤギの中島さん

島でのんびり、世界とつながる――アジアからの誘客と島暮らしのゆったり計画

Q 最後に今後の展望や野望を教えてください。

今後は、今年度に台湾で試行したように、他のアジア諸国でも各国ごとに誘客プロジェクトを実施してみたいと考えています。多言語対応を進め、Worldpackersのようなプラットフォームを利用してボランティアをしながら旅行するツーリストにも閑散期には滞在いただく予定です。
また、地域の人々にゲストハウスを利用してもらえないかを模索しており、全国のコワーキングスペースが登録するプラットフォーム「TeamPlace」に登録したところです。各島でゆっくりと過ごせる環境を整備し、周遊・滞在型の観光スタイルを作りたいです。
高井神島では2025年4月からの「まんが学校」の運営体制を構築中です。
これまでいろんなことに挑戦してきましたが、今後は自分でも家の改修をしたり釣りやSUPをしたりと、ゆったりとした島暮らしを計画しています。

ゲストハウスみちしお公式ホームページ https://r.goope.jp/michishio

ゲストハウスの壁画
愛大生たちとポタリングマップ制作
ゲストハウスみちしおのロゴ入りヘルメット