島で、“これまでなかったもの”をつくっていきます。

地域おこし協力隊 今治市上浦町(大三島)  麦島康友さん

神奈川県横須賀市生まれ。大学進学をきっかけに、横浜市で一人暮らしをはじめる。大手パンメーカーに就職し、製造管理で3年働いた後、不動産屋に転職。13年間の営業職を経て2018年、今治市・大三島の地域おこし協力隊に。現在、銀シャケの養殖や加工品の開発などを行っている。

「しまなみ海道(西瀬戸自動車道)」でつながる島のひとつ、大三島。柑橘をはじめ、農業がさかんな島で、地域おこし協力隊として銀シャケの養殖に取り組むのが麦島康友さんです。

自然のなかで働く願望を叶える。

康友さんは神奈川県横須賀市出身。海まで歩いて5分という、のどかな環境に生まれ育ちました。大学への進学をきっかけに、横浜市で一人暮らしをはじめ、卒業後はパンメーカーに就職します。製造の管理をする立場で、工場内で働く日々。「外の世界を見てみたい」と退社し、不動産屋に転職します。賃貸の営業で、横浜市、さいたま市で暮らしながら13年間、過ごしました。

「しごとにやりがいはありましたが、中学時代から、自然のなかで働きたいという思いがずっとありました。移住するならいまかなと考えました」

思いついたら即行動の康友さん。「できれば島へ移住したい。島といえば瀬戸内海。瀬戸内海といえば愛媛」と、東京都内の愛媛県の移住相談窓口へ。そこで紹介された、大三島を含む3つの島へ足を運びました。

「海に島がぽっかり浮かんでいて、海もうつくしく、その風景に感激しました。宿泊した民宿のひとたちも温かくて、島で生きているひとたちを実際に見たこともよかったです」。実際に島へ移住したひとたちから、島暮らしやなりわいの話を聞き、さらに「地域おこし協力隊」という働き方があることも知り、大三島へ移住する気持ちを固めていきました。

漁業というミッションにたどり着く。

2018年4月、大三島の上浦地区で協力隊に。任務内容は決まっていない「フリーミッション」だったため、手探りのスタートでしたが、20項目ほどの「やりたいことリスト」をつくって行政の担当者に提出。そのなかにあった「漁業」で、島内にある海関連のしごとから声がかかるようになりました。

その冬、大三島漁業共同組合が銀ギャケの養殖を試験的にはじめる話が持ち上がり、康友さんに白羽の矢が立ちます。観光船のみが行き来する「井口港」を漁場に、銀シャケ約1000匹の養殖をスタート。以降、餌やりをはじめ、漁場の管理を一手に引き受けています。

シャケの養殖にかかる期間は半年。海水温が上昇する5月上旬には一斉に引き揚げます。時間ができる夏場を生かし、康友さんがはじめたのがシャケの加工品の開発です。

「しまなみ海道のおみやげとして、柑橘系のものは豊富ですが海のものがほとんどありません。大三島のオリジナルのものがあったらおもしろい、と思いつきました」

あるものを最大限に生かす道を探る。

そこで着目したのが、常温で持ち運べ、日持ちもする燻製。業務用の燻製器を揃え、1年後の商品化にむけて試作を重ねています。

育てたその先まで丁寧に向き合う康友さん。その行動を支える想いを語ります。

「この島で、漁師はほとんどいません。このままでは漁業そのものが消えていってしまいます。きちんと収益をうむことで、『やってみたい』と挑戦してくれる若者が現れてくれるとうれしいですね」

銀シャケには「大三島いよかん銀鮭」というブランド名をつけました。康友さんはこれからもシャケの成長を見守りながら、この島をシャケの一大産地へと育てていきます。