【協力隊インタビュー】01 白井日向さん

地域おこし協力隊 松野町 白井日向さん

滋賀県生まれ。小学生のころから関心があった環境問題や野生動物について学んだのち、2020年4月、松野町の地域おこし協力隊に着任。滑床渓谷を中心にネイチャーガイドとして活動するほか、ドローンやカメラを駆使し、町の魅力や松野町地域おこし協力隊の活動を発信している。

日本の滝100選にも選ばれた雪輪の滝をはじめ、花崗岩の河床の滑らかさや清流の美しさが際立つ、国立公園「滑床渓谷」を有する松野町。84%を森林が占めるこの山間の町で、ネイチャーガイドとして活動しているのが、白井日向さんだ。

環境問題には絶対に関わりたい。

 小学生の頃から自然遺産とその存続を脅かす環境問題に関心を持ち、化学からのアプローチを学びたいと福井県の高等専門学校へ進んだ日向さん。

 「研究職に就くよりもフィールドに近い場所で学びたい」

 そう考え、5年制の高専を4年で自主退学し、大阪にある動物関係の専門学校へ再度入学。週に4日は山に入るなどフィールドに足を運ぶ授業が多く、充実した学びの日々を過ごす。

 そして、就職活動のタイミングで出会ったのが、地域おこし協力隊という制度だった。

自らなにかをしてみたい。

 地域おこし協力隊に興味を持ったものの、どこで活動しようか、と下調べのため足を運んだ大阪の移住フェアで出会ったのが松野町だった。それまで候補にあげていなかったにも関わらず、下見に訪れた際、滑床渓谷に一目惚れをしたのだそう。

 松野町が掲げている「夢を叶える提案型」という地域おこし協力隊の募集が、自分で進んで何かをしてみたい、起業もしてみたい、という思いがあった日向さんにフィットした。好きなことを仕事にして、それを実現していけそうな気がしたという。

「環境問題には関わり続けたい」

 そう考えていた日向さんにとって、滑床渓谷という自然を通じ環境問題に関わることが仕事になる、新たな可能性を示してくれたのが松野町だった。

いろいろなことがひとつにつながって。

 「松野町に来たばかりの頃は何をしていいか分からず、とりあえず山に入って調査するだけだった」という日向さん。とりあえずといいながらも、朝6時から山に入り生態調査を続けていたというから驚く。

 活動を始めて3ヶ月が経ったころから、頼まれごとも増え、日々の活動のかたちができていく。松野町の広報での生き物コーナーを担当したことで、地域の人が広く日向さんの存在や得意分野を知るようになったのだ。また、地域外への情報発信として、ドローンを活用したYouTube配信などもスタートした。

 野生動物の調査のために専門学校時代に取得していたドローンの技術も活動に発揮されるようになり、これまでの経験が生かされていく。

まずは知ってもらうことから。

 滑床渓谷の自然を知ってもらうことで、少しでも環境問題に関心を持って欲しいという思いは、日向さんのガイドとしての姿勢にも現れている。

「この木の名前はわかりますか」

「今、鳥が鳴いたのは聞こえましたか」

「蛇が好きなので見かけると捕まえます」

 滑床渓谷の至る所につけられた見どころの名称の謂れとともに、渓谷の自然の成り立ちを案内してくれる日向さん。地形や景観に関してだけでなく、そこに生きる動植物の話が次々に登場し、思わず驚きの声があがる。

 以前滑床渓谷でガイドをしていた師匠から教わったことだけでなく、専門学校時代に身につけた動植物の知識や図鑑などで調べたという独学に基づくガイドは、日向さんならではのものだ。

すべては環境保全のために。

 地域おこし協力隊として松野町に来て半年が過ぎ、地域には慣れてきたものの、活動としてはまだまだこれから。

 協力隊の任期後は、愛媛県南予地区全体でのエコツーリズム団体に関わったり、滑床渓谷をメインにネイチャーガイドをしたりしていきたい、と構想が広がる。

 動画クリエイターとしての活動や、ドローン撮影などを仕事にしていくことも考えている。いろいろなところに撮影に行き、自然環境の現状をより広く発信していきたいのだそう。

「観光をひとつの切り口として、ネイチャーガイドや映像制作をすることで、環境保全について多くの人に知ってもらう活動をしたい」

 日向さんのガイドや映像を通して、松野町や滑床渓谷の魅力、そして環境保全の意識が、地域内外へ伝わり広がっていくのが楽しみだ。