宇和島市地域おこし協力隊 柳井 孝之さん
愛媛県で活動している現役地域おこし協力隊の活動紹介ブログ、今回は南予移住マネージャーの山口聡子が宇和島市で活動する柳井孝之さんを取材しました。
愛媛県の南に位置し、年間を通して、暖かく晴れの日が多い宇和島(うわじま)市。
美しい山々と穏やかな宇和海に囲まれた宇和島市は真鯛や真珠、柑橘3つの「生産量」日本一を誇る。柑橘畑や段畑がひろがり、養殖いかだが浮かぶ、豊かな産地の海が美しい。「宇和島城」を中心に、牛鬼祭りや闘牛など独自の文化や祭りも残っており、宇和島港には「きさいや広場」という海の幸・山の幸を気軽に味わえ、手に入れることのできる市場もある。様々な味わいと体験が出来る、魅力あふれるエリアだ。
2021年5月、柳井さんは、そんな宇和島市の地域おこし協力隊に着任した。
充実していた都市部での生活
「自分はこのまま都会に住み、仕事と趣味を続けていくのだと思っていました。」
大阪府で育ち、都内の大学への進学で写真を撮り始め、気づけば卒業アルバム制作部を担うまでになった。社会人になってから、スカバンドを結成。CDもリリースし、今では仲間とリモートで演奏するなど、音楽が自身のライフワークのひとつになっている。仕事は、プログラマーや保険会社勤務。趣味や仕事を仲間と過ごす充実した日々に、不満はなかった。
片道切符の旅は、地域づくりや宇和島へと続く
そんな柳井さんに、転機が訪れたのは2011年。東日本大震災後、仲間とのライブも中止になってしまった。ある出来事をきっかけに、何も手につかない状態に陥ったその年のゴールデンウイーク。柳井さんは、片道だけ航空券を買って、祈願も込めて旅に出ることを決める。大分県から、フェリーで山口県に入り、瀬戸内をローカル線で移動した。ホテルもその場で決める、きままな旅をしながら、瀬戸内のゆったりした風景に「田舎っていいなぁ。」と感じたという。
それがきっかけとなり、3か月後、実際にNPO法人Eticが主催する地方創生プログラムに申し込んだ。短期間の現地フィールドワーク含む体験を通して、田舎に移住する現実味が増してくる。
「そして、やっぱり農業は必要だなと感じました。」
都市部に戻っても、野菜の勉強を開始し、移住に向けて行動を開始。そして、翌年の地方創生プログラムの参加地が、現在の協力隊の着任地の宇和島市だった。
プログラムが終わったあとも、宇和島を訪れ、東京でも宇和島の産品をイベントでPRするなど、交流が続いた。非日常の関係性ではあったが、訪問や、再会するたびに、懐かしい顔ぶれに会えることは、嬉しい時間になっていく。
時間をかけて選択した、一度目の移住
それでも、柳井さんが会社辞め、移住を決断するまでには時間を要した。
会社で労働組合の委員長を任命されたのだ。責任感のある仕事を担いながら、組合活動で、地方のいろいろな場所を訪問し、地方を見る機会も増えていく。そこで出た結論。
「田舎に行くなら、仕事をつくらないといけない。」
アグリイノベーション大学で有機野菜を学び、貸農園で実践する日々。農家としての起業の年齢的リミットも考慮し、2017年に会社を退職。起業のプランも作って、福岡県大川市の地域おこし協力隊に着任した。ビニールハウスで多品目を作り、消費者に購入していただくスタイルで農業を始めたのだ。
約100種類を育て、マルシェにも出品していたが、道半ば、夏の豪雨災害でビニールハウスが崩壊してしまう。そして人生の選択を、再び考えることになった。
「自身のやりたいことや、できることは何なのか?」
その後、同市のヨーロッパ野菜の生産や販路開拓プロジェクトへ関わることとなり、運営事務局に携わることを選択した。ブランド化の手伝いや、生産者をサポートする仕事にシフトしていく。
現地で思ったことは、
「農家の人は、多品目の野菜に興味はないが、料理人は真剣にその素材に向き合い評価してくれた。身近に価値が分かる人がいたら売れる。そういう人がいれば、可能性がある。」
ということだった。
農業の厳しさと、消費者に届くまでのプロセスに様々な仕事があることを知り、1度目の協力隊を卒業した。
もう一度、挑戦したい
横浜に戻った柳井さんは、イタリア産のワイン輸入も手掛けるIT関連企業に就職する。だが、今までの経験を活かし、地域で食と農に関わりたいという気持ちが消えることはなかった。
会社でワインの在庫管理システムのリニューアルを担当していた時も、農や食とのペアリングで付加価値を高め、販売していくことばかりに、想像が膨らんでいった。そうしているうちにコロナの長期化と就職した会社との価値観にズレを感じ離職。一次的に福岡にてWeb関連の職業訓練を受けることにした。
福岡に居住している時に、柳井さんの元に、宇和島市地域おこし協力隊の話が舞い込んでくる。経験値を増やした上で、地方創生プログラム受入地である宇和島市を見たときに、新たな可能性を感じ、二度目の協力隊に応募をすることを決めた。
今までの、全てを活かしながら
「宇和島は、産品の宝庫。付加価値を発揮させ、販売のサポートがしたいですね。」
そう語る柳井さんの協力隊としてのミッションは「ECサイト立ち上げや、そのコンサルティング。」
現在は市内の事業所に出向いて、運用の流れやしくみを伝えている。来年度の道の駅のECサイト構築に向けて、宇和島Web担当者友の会や市主催のECサイトセミナー事務局の運営も開始した。自身のミッションを果たす為の学びにも積極的で、愛媛大学の地域創生イノベーター育成・柑橘産業人材育成プログラムも受講中だ。地元のコワーキングスペース「UWAJIMA QUEST」の会員になり、事業者との繋がりづくりやこれからの種まきも行っている。実際の野菜作りもジャム・マーマレード製造販売店「シトラスライン」さんに園地を借りて、ヨーロッパ野菜を栽培中。愛媛県下の地域おこし協力隊の食にまつわるミッションの仲間と「Fish & Chips」というグループで活動や情報交換もスタートするなど、活動は多岐にわたっている。
実際に農業を経験し「出口をつくる。価値を伝えることの必要性」を痛感した経験も活かし、現場の声やサイトを立ち上げるその先を見据え、どう今の自分のミッションを遂行していくか。幅広い知見と活動を目標に、柳井さんの挑戦は続いていく。
宇和島市HP:https://www.city.uwajima.ehime.jp/
宇和島市観光物産協会Instagram:https://www.uwajima.org/
宇和島ぐるりInstagram:https://uwajima-gururi.com/
柳井隊員インスタグラム :https://www.instagram.com/good_food_lab_2021/?fbclid=IwAR2-o-gU65j2WGmcqDL6ZK-Fjnl5iCAvtWSW5pp4ICC9yuw2EXXMCswM6Ew
柳井隊員Facebook :https://www.facebook.com/takashi831