キジと一緒に生きていきたい!

鬼北町地域おこし協力隊 大村 怜さん

鬼北町地域おこし協力隊の大村怜さん

 愛媛県の西南部に位置する、人口約1万人の小さな町、鬼北町。全国の自治体で唯一「鬼」の文字のつく自治体であることから、「鬼の棲むまち」として有名だ。山々に囲まれた四万十川上流域の自然豊かな環境では、全国でも数少ないキジの養殖がおこなわれている。そんな鬼北町で、2022年4月から地域おこし協力隊として活動しているのが大村怜さんだ。

生き物に関われる仕事がここにあった

 東京都出身の大村さんは、コロナ禍での就職活動をしていた大学4年時、関東で就職先に内定をもらっていた。しかし、本当に就職することが自分にとって正しい道なのか悩んでいたそうだ。そんなとき、(一社)いなかパイプの提供する“田舎でのインターンシップ”に参加したことが地方への移住を考えたきっかけだ。

 大村さんが1か月間の田舎体験をした地域は、愛媛県鬼北町と隣接する高知県四万十町。その期間に、隣の町も見てみたいと思い訪れてみたのが鬼北町との出会いだった。四万十町と同様の自然の豊かさに加えて、生活に便利な宇和島市への交通アクセスの良さが、暮らしのフィールドとして魅力的に感じられたそうだ。

 就職活動をする中で、本当は自分の好きな生き物に関わる仕事をしたいと考えていた大村さん。鬼北町では「キジの養殖」という仕事があることを知り興味を持った。その場で自治体の窓口を訪ねて地域おこし協力隊の制度を教えてもらい、「ここでキジの養殖を学びながら生活してみたい」という思いに至った。就職という選択肢もある中、そのときの自分に出せる最善の答えは、鬼北町で地域おこし協力隊として活動することだったという。

キジの養殖に野菜栽培、とにかく学ぶ日々

 着任後は、鬼北町でキジの養殖をしている「鬼北きじ工房」で週2回ほどキジの飼育について学んでいる。内容は、キジの育て方からキジ肉の解体までさまざまだ。そのほか、地元の農業の担い手の育成をしている(一社)鬼北町農業公社では野菜栽培について学び、個人でも地域の方に畑を借りて野菜の育て方を日々勉強している。
 着任してからこの約1年間はとにかく身体を動かし、さまざまな場所に足を運んで学ぶ日々だったそうだ。

「キジに限らずいろんなことをやろう」

 協力隊として活動をはじめる前から、キジの養殖一本でやっていくのは難しいと覚悟していた。役場の担当者からも、多方面での活動の可能性を考えていいと言われていたそうだ。現在は、キジの羽を使ったアクセサリー作りにも取り組んでおり、地域の魅力とともに自身の活動の発信も積極的にやっていきたいという。

地域定着に向けてさらにスキルを得たい

 都会からやってきた「ワカモノ」「ヨソモノ」として、地域の活動に積極的に参加し、交流を深めている。

「青年団を通じて地元の中学生たちと交流したり、お世話になっている農家さんと飲みに行ったり、釣り好きなおじいちゃんと釣りに行ったり、お祭りの練習に加わったり、たくさん楽しませていただいています。」

 自然体で地域の人たちの輪に溶け込み、自分のスタイルで多方面に活動する大村さん。地域おこし協力隊の活動はまだ1年目でわからないことも多いからと、自身の活動の参考にするために時間を見つけては県内各地の協力隊のもとにも足を運んでいる。異なる地域で多種多様な活動する仲間にいつも良い刺激をもらっている。こうした繋がりがきっとこれからの役立つと信じての試みだ。

 主なミッションでもあるキジの養殖はもちろん、3年間かけて自分のできることを増やし、この地域で生きていくための生業を複数つくることが現在の目標だ。自分らしいライフスタイルを求めていくことに、もちろん不安も迷いもある。しかし、関東での就職を選ばずに鬼北町で暮らしてる現在に後悔はない。移住してまもなく1年。フットワーク軽く可能性を広げ続ける大村さんのこれからに期待だ。