自分のペースで見つけた、愛南町の暮らし

愛南町地域おこし協力隊 関根麻里さん

愛媛県の最南端に位置する愛南町は、南は太平洋、西は穏やかな豊後水道に接しており、ダイビングなどのマリンスポーツのメッカであり、水産業や柑橘農業もさかんで、言うなれば、豊かな自然と美味しいものに囲まれたまち。このまちで、食と観光をミッションに地域おこし協力隊として活動しているのが、関根麻里さんだ。

しっくりこない都会暮らしから、震災ボランティアへ

 東京都目黒区出身である関根さんは、大学を卒業後、生命保険会社にて営業職として勤務したのち、派遣スタッフや事務職などを経験。都会のオフィスで忙しい日々を過ごしながらも、プライベートでは友人たちと買い物や食事に出かけるなど、いわゆる「都会暮らし」を楽しんでいた。

 そんな矢先、2011年3月11日、東日本大震災が発生。被災地である宮城県南三陸町へ震災ボランティアとして参加することとなった。

 知り合いが東北に住んでいたことが直接的なきっかけではあったが、周りの友人たちが結婚や出産などを経験していくなか、今までと同じような暮らし方に何かモヤモヤしたものを感じていた。その気持ちがボランティアへの参加を後押しした。その頃から、都会とは違う田舎での暮らしを漠然とイメージするようになった。

 震災ボランティアはこれまで経験したことのない新しい発見ばかり。現地で出会う人たちみんなが優しく、現地の食材による食事もとても美味しかった。スーパーでしか食材を買ったことがなかった自分にとって、今まで出会ったことのなかった農業や漁業などの第一次産業従事者と身近に関わることもとても新鮮で楽しく感じられた。気がつけば、毎週末現地を訪れるようになっていた。

 日々活動するボランティアの現場の中で、自分の家や船が流された被災者が借金してまで現状を乗り越えようと頑張っている姿を目の当たりにする。その思いを知って胸がドキドキした。

 「自分は今、本当にやりたいことができているのだろうか?」

自分となんとなくフィットした愛媛の地

 その頃、友人が夏休みに地元の四国に帰郷するということで、旅行がてらついて行くこととなり、初めて愛媛を訪れた。東北の海とは違ってのんびり穏やかな印象の瀬戸内海を見て、なんとなく自分にフィットしているような気がした。そして、再び田舎暮らしを意識し始めた。

 その後、東京で開催された愛媛県の移住イベントに参加し、そこで出会った愛南町の地域おこし協力隊から、まちの魅力や海の魅力を存分に聞いた。その2ヶ月後、現地を訪れ、町中を案内してもらった。地元のみんなからは大歓迎のおもてなしを受け、愛南町のあたたかい人柄に安心感を覚えた。

 「自分のペースと町のペースがちょうど噛み合ったのかもしれません。」

 地域おこし協力隊の募集へ応募し、協力隊員として愛南町へ移住をすることとなったが、田舎暮らしを初めてイメージしてから、すでに6年が経っていた。

食と観光を通じて、地域と関わる

 現在の活動は、「道の駅みしょうMIC」で愛南町産品の物販を行ったり、商工観光課のふるさと納税業務に同行し、商品撮影などを行っている。そこでは漁港で船に同乗したり、柑橘の畑へ伺ったりと普段ではできなかったことも体験させてもらっている。

 また、愛南町の食材を使ったインドカレー開発を行い、地域の人たちを対象にした試食会を実施。さらなる商品開発にも力を入れている。

 このように、さまざまな活動を通して、愛媛、そして愛南町の魅力をじわじわと感じている。

「愛南町のみんなは優しくて、お酒も大好き(笑)。とても社交的で移住者である私のことをいつも気にかけてくれています。日頃、商品開発の話をしているからか、料理関連の行事があるといつも声をかけてくれる。まじめであったかい。そこが愛南町の魅力かも。」

 都会と違って人と人がとても近い。かつての東北ボランティアでの経験が、自分自身田舎暮らしの前準備となり、地域へスムーズに溶け込むことができたのかもしれない。

「将来についてはまだ漠然としています。小さな食堂を作って地域のみなさんが集まれるような場所になるといいですね。」

 自分らしい生き方、暮らし。

 震災ボランティアや旅の経験を経て、辿り着いた愛南町で、まさに今、「本当にやりたいこと」の答えを探し続けている。

愛南町公式ホームページ (town.ainan.ehime.jp)
道の駅 みしょうMIC 公式ホームページ (m-mic.jp)
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