四国の地域おこし協力隊等交流勉強会in愛媛県

みなさん、こんにちは。

えひめ暮らしネットワークの鍋島悠弥です。

10月12日(月)から13日(火)の2日間で、四国4県の地域おこし協力隊が集う研修会が愛媛県松山市で開催されました。現役の地域おこし協力隊と集落支援員94名、県庁や自治体職員37名、総勢131名が参加する、賑わいある研修会となりました。

この四国研修会は、4県が持ち回りでホストとなり毎年開催されています。今年は4年に一度の愛媛県がホストの当たり年。我々えひめ暮らしネットワークは、愛媛県と協力するかたちで研修の企画運営に携わりました。

今回のブログでは、その四国研修会第1日目、全体研修会の報告をします。

研修会の企画と運営

今回の研修を企画するにあたって大切にしていたことは、「一貫したテーマのもとにストーリー性を持たせた研修会とすること」でした。

参加者の数が多くなればなるほど、研修というものは全体にフィットすることが困難になってきます。それでも、なるべく多くの参加者に「腑に落ちた」と感じてもらえる研修会とするため、テーマを掲げることとストーリー性を持たせることは必須だと考えていました。

その結果、今回の研修では「地域おこし協力隊活動と自己実現」をテーマとし、それに紐づいたプログラムを用意し、企画をつくりあげていきました。

研修開始、その前に…

1日目の全体研修会は、愛媛県庁第2別館の大会議室で開催されました。

えひめ暮らしネットワークのメンバー、山口聡子さんがその場でウェルカムボード的な案内をホワイトボードに書き込んでくれており、開始前から「楽しいえひめ」な雰囲気を醸し出すことに一役かってくれていました。 参加者たちは、開始前の時間を利用して積極的に名刺交換をしたりコミュニケーションをとるなどしていました。この前向きな空気感こそが、研修にはとっても必要なこと。みなさんの積極性や熱気が感じられる、良い時間だったと思います。

1.ワークショップ「地域づくりクロスロード」

挨拶の後に始まった研修のひとつめのプログラムは、ワークショップ「地域づくりクロスロード」。

進行は、えひめ暮らしネットワークのぼくと本多正彦さんが担当しました。ぼくと本多さんは、総務省が主催する協力隊の全国研修にアドバイザーとして参加しています。研修の本質や目的を共有できている貴重なメンバーである本多さんとタッグを組んでいたおかげで、クロスロードは安定感をもって進行することができました。

クロスロードは、災害救助の実務経験から学ぶべき知恵をまとめ、他の現場で生かすために開発されたワークショップです。このクロスロードを地域づくりという分野に応用したものが「地域づくりクロスロード」となります。

6~7名のグループで一つの問いに対してみんなで回答を共有し、投票タイムを設けて「お勧めの意見」「一理ある意見」を全体で共有する、といった内容になります。このクロスロードでは、参加者にどういった問いを投げかけるかが非常に重要な部分になってきます。今回は研修の全体テーマである「協力隊活動と自己実現」に沿った問いかけを用意しました。

問い「「自分がやりたいことと、地域から求められること(もしくはミッション)が噛み合わない。どう地域おこし活動をしていく?」

「自分ゴト」と「地域ゴト」が馴染まない、求められることが多い、自分のやりたいことがなかなかできない…。地域おこし協力隊にとっては、少なからずあるあるな問いではないでしょうか。なかには、この問いは我がコトすぎて重たいと感じた参加者もいたかもしれません。個々の回答の共有タイムでは、参加者の多くが自分の経験談から積極的に回答していました。時折、回答にはならないけれど悩みを吐き出す隊員も…。こうして自分の想いを地域の外で吐き出すことができる研修会というものにも意味があるのでしょう。会話が絶えない積極的な空気感のなか、クロスロードは進行していきました。

ワークの最後のグループから出た回答の共有タイムでは、以下のような意見が出されました。

本来ならばここで自身の経験からのアドバイスなども取り入れるのですが、ワークの後にはえひめ暮らしネットワークの千々木さんの事例発表があります。千々木さんは、協力隊としての活動と自己実現のバランス感覚に優れていた人です。そちらでの講演やディスカッションタイムに回答編を先送るかたちにして、ワークを終えました。

2.事例発表「協力隊活動とこりおり舎」 愛媛県今治市地域おこし協力隊OG 千々木涼子

千々木涼子さんは、今年の3月に地域おこし協力隊の任期を終えたばかり。現在は珈琲と本の店「こりおり舎」を経営しながら、えひめ暮らしネットワークの事務局を担ってくれています。

千々木さんは、自分の思い描く暮らしと起業を実現するための手段として、地域おこし協力隊という制度を利用して地域へとやって来ました。自己実現のための手段としての協力隊制度だった、というわけです。しかしながら、協力隊として地域で暮らしを送る中で、徐々に心境に変化が現れてきます。

『ヨソモノの自分を地域のひとたちは温かく受け入れてくれて、ほんとうによくしてくれた。自己実現を優先して起業して地域に残ることも大切だけど、もっと「協力隊だからこそできること」があるんじゃないかと考えて、いろんなことに取り組んだ』

千々木さんの思いは地域にじんわりと、そして確実に浸透していきました。その様子は、彼女が講演で口にする暖かな言葉からにじみ出てくるものばかり。結果的に、千々木さんは地域や役所から応援され愛されるかたちで、起業という自己実現を現実のものとしました。

講演後の質疑応答の時間では、起業に関する実務的な質問が参加者から多く寄せられました。3年間で確実に起業し自己実現を果たした千々木さんは確かに立派なことをしているのですが、ぼくとしてはその根底にあるものをもっと参加者に伝えたいと考えていました。それこそが、クロスロードで取り組んだ「協力隊活動と自己実現」のひとつの答えにもなるからです。質疑応答の後のディスカッションタイムのまとめとして、こんなことを伝えさせていただきました。

・協力隊として3年間の任期終了後に起業できたのは理想的。

・でも、ほんとうに素晴らしいのは千々木さんが地域や役場から応援され、愛され、起業できたという事実。

・地域に向き合い活動し、地域での暮らしを大切にしてきたからこそ、現在の千々木さんのお店がある。

・起業だけを考えると遠回りをしたかもしれない。でも、必要な遠回り。

・協力隊活動と自己実現の狭間で悩みながらも、その両方のバランスをしっかりと意識することが重要。

・バランスはそれぞれが独立したもの。最終的にはミックス(自分と地域が混ざり合うようなかたちで自己実現)を目指してほしい。

3.講演「ライフデザインを考えよう」 ファイナンシャルプランナー いずたにかつとし

1日目のラストを飾るのは、山口県周防大島に暮らしをおくるファイナンシャルプランナー、いずたにさんの講演でした。

ファイナンシャルプランナーからの講演というと、数字みっちりの理詰めの話が多いのでは、というイメージがありました。しかしながら、いずたにさんの講演は非常に言葉巧みで柔らかく、そして時折要所を鋭く突いてきてはっとさせられるような、思わず聞き入ってしまう大変興味深いものでした。

はじまりのテーマは、田舎暮らしのリアルをきちんと考えたうえでライフデザインを考えていきましょう、というもの。イメージのなかの田舎暮らしではお金がかからないというけれど、それって事実なんだろうか。お金という目線からみた都会と田舎の暮らしの違いってどこにあるのか。こういった内容を、ファイナンシャルプランナーならではの目線から、でも詰め過ぎない言葉でお話いただきました。田舎暮らしにおける(あくまでも一般的な)必要資金を具体的な資料を通して説明してもらうなど、協力隊にとっても、現在田舎暮らしを送るぼくにとっても得るものが多くありました。

2つ目のテーマは「ライフデザインと仕事」について。大阪から山口県へ移住して13年を経たいずたにさんの経験を踏まえた観点から語られる「仕事」の話は、協力隊にとって非常に参考になったのではないかと思います。「自分」の主観ではなく「地域」の目線にしていくことの大切さ。自分本位では限界があること。自分ではなんとなくわかっているけどそうはできない、なんて思っていた事柄が、いずたにさんの言葉で語られることで改めて「腑に落ちた」という人も多かったのではないでしょうか。

いずたにさんの講演は、「協力隊活動と自己実現」のテーマを掲げた全体研修の終わりにとても有意義なものでした。クロスロードを通して自分の回答をアウトプットして、他の参加者の意見も共有する。実際の協力隊経験者の話から、協力隊活動と自己実現におけるひとつの解に触れる。そして、最後に協力隊のその後の暮らしをお金というリアルな面から捉えつつ、田舎暮らしにおける仕事とはなにかを知る。 いずたにさんの講演を聞いたことで、今回の研修テーマは協力隊の活動期間だけの話では収まらないものなのだと改めて実感しました。自分本位ではいけない、地域の目線で仕事を捉える。これこそが「地域ゴトと自分ゴト」をうまくミックスさせていくこと、すなわち「協力隊活動と自己実現」の解と同義ではないかと感じたのです。

おわりに

以上が四国研修1日目のレポートでしたが、いかがだったでしょうか。

全体の感想として、参加者の多くが前向きに真面目に、そして楽しく研修に向き合ってくれていたように感じています。今回の研修に手応えがあったのは、もちろん運営側の努力もあるのですが、なによりも参加者のクオリティがとても高かったことが一番の要因となったのではないかと思います。この全体研修からなにかひとつでも得るものがあり、えひめの研修に来てよかったなぁ、と思ってもらえているととても嬉しく思います。

研修の2日目は、4つの分科会に分かれて実施されました。その様子は、今後こちらのブログで報告させていただきますので、お楽しみに。